「自然な雰囲気の木を楽しみたいなら、手入れなどせずに放置するのが一番きれいです」
美の基準は人それぞれなので、異論もあるかもしれませんが、その木本来の自然な雰囲気を楽しむなら、人が手を加える必要などなくて、放っておくのが一番だと何となくご理解いただけるのではないかと思います。
では、「なぜ、庭の手入れをするのか?」、あるいは「なぜ、庭木を剪定しているのか?」ということを考えたことがありますでしょうか?
それは当然「伸びるからやってるんでしょ」と思われるかもしれません。
それなら「なぜ、伸びたら切るのでしょう?」
「茂り過ぎて暗くなるから」、「近所迷惑だから」、あるいは「風で枝が家を傷めるので」、「落ち葉がすごいから」などなど、理由はいくつかあります。つまり、人間都合でやむなく木は切られているわけです。
でも、これらの事からわかることは、庭木を剪定する一番の目的は、樹木の生長を抑制することだということです。人間の住空間という限られたスペースの中で、適切な姿とサイズを保つために剪定は行われています。また、何本かまとまって植えられている場合には、それぞれが適切なサイズでいられるように、生長具合を互いに調整するために、剪定というものは行われています。
たまに、「手入れ」という言葉のプラスイメージからか、樹木にとって剪定はいいことだと思われている方がいらっしゃいます。でも、ほとんどの場合、剪定は木にとってリスクでしかありません。木にとっては、正常に機能している体の一部を消毒もなしに切られているのです。ですから、「人間都合で申し訳ない」というのが実際のところです。
ここまでは一般論です。そして、ここからは私たちの信念でもありますが、庭の手入れでとても大事なことは、とにかく第一に美しくあることだと考えています。そもそも、庭は何のためにあるのでしょう?庭木は何のために植えたんでしょうか?という大元のことを考えてみてほしいと思います。
いちばん最初は、庭をつくる、木を植えることで、室内同様に豊かで充実した生活を送りたいと考えたからではないでしょうか?であれば、庭はまず第一に美しくなければなりません。景色としてあなたの心を豊かにしてくれるものでなければ、そもそも存在する意味があまりありません。
そこを忘れてしまって、邪魔だから切るというのであれば、もう庭も木もなくていいはずです。わざわざ手入れの費用をかけて、プラスにならないことをしていても意味がありません。樹木の方だって、毎度毎度無残に切られる飼い殺し状態では本当に残酷です。そうはあってほしくない。せっかく植えてあるのだから、それを楽しんで頂きたいと心から思っているわけです。
そして、庭を良い状態で楽しむために、持ち主さんができることでは、お掃除であったり、水やりであったり、たまには庭を観察して、異常があれば気づいて対処する心掛けが大事です。不思議なもので、大切にされている庭というのは、見る人が見ればわかるものです。大切にすると言うと、毎日庭に出て、こまめに手入れするというレベルを想像されるかもしれませんが、そこまでではなくても、無意識に日々庭を感じている、たまにはお掃除や水やりをする、というくらいでも、庭の表情は変わってきます。
それから、私が繰り返しお伝えしている庭木の剪定手法は重要です。私は自然風な手入れを実践していますので、基本的にたいていの樹木は自然な感じに剪定していきますが、剪定手法は他にもいくつかあり、その庭のスタイル、その樹木に合った剪定方法を選ぶ必要があります。